施設さがし
親の食事量が減ってきたら|高齢期の低栄養を防ぐたんぱく質の目安と、飲み込みが心配なときの選び方

「最近、うちの親、食が細くなって」。ご相談のなかでよく聞く言葉です。年齢のせいだから仕方ない、と受け止められることが多いのですが、実はここが分かれ道になります。食べる量が落ちると体重が落ち、筋力が落ち、転びやすくなる。転んで入院すると、そのまま在宅生活が終わってしまうことも珍しくありません。施設への入居を考えはじめる引き金が、この一連の流れであることは本当に多いのです。今回は、高齢期の食事で押さえておきたい目安と、飲み込みが心配になってきたときの考え方を整理します。
65歳以上の5人に1人が「低栄養傾向」
厚生労働省の国民健康・栄養調査(令和5年)によると、65歳以上で低栄養傾向(BMIが20以下)にあたる方は男性12.2パーセント、女性22.4パーセントでした。女性は5人に1人を超えます。しかも年齢が上がるほど割合は増えていきます。
低栄養が怖いのは、それ自体よりも、そこから始まる連鎖です。フレイル(虚弱)は、体重減少・疲れやすさの自覚・活動量の低下・歩行速度の低下・筋力低下の5項目のうち3つ以上に当てはまる状態を指し、転倒や入院、日常生活動作の低下と結びつくことが分かっています。
つまり「痩せてきた」は、放っておいてよいサインではありません。
高齢期は「食べる量を減らす」時期ではありません
健康診断で「痩せなさい」と言われ続けてきた世代ほど、痩せることを良いことだと考えがちです。しかし高齢期は逆です。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、65歳以上の目標BMIを21.5〜24.9としています。一般に言われる「BMI22前後が理想」よりも、下限がはっきり高く設定されているのが特徴です。
たんぱく質については、65歳以上の推奨量が男性60グラム、女性50グラムです。さらに、総エネルギーに占めるたんぱく質の割合の目標量が、65歳以上では15〜20パーセントに設定されています。64歳以下の13〜20パーセントより下限が引き上げられており、これはフレイルの発症予防を目的としたものだと明記されています。
体が小さい方や、75歳以上で活動量がかなり落ちた方など、そもそも食べる総量が少ない方については、下限を推奨量以上にすることが望ましいとされています。少食の方ほど、限られた量のなかでたんぱく質の密度を上げる必要があるということです。
離れて暮らしていても気づける3つのサイン
毎日一緒にいないと体重の変化は分かりません。帰省や訪問のときに、次の3つを見てください。
【1】指輪や衣類がゆるくなっていないか 体重計に乗ってもらうのが一番ですが、嫌がる方も多いので、指輪が回る、ズボンがずり落ちる、といった変化で気づけます。半年で体重の5パーセント(50キロの方なら2.5キロ)が減っていたら要注意です。
【2】冷蔵庫の中身と台所の様子 同じ惣菜がいくつも残っている、賞味期限切れが増えた、鍋を使った形跡がない。調理そのものが負担になっているサインです。
【3】食事の内容が「炭水化物だけ」になっていないか ご飯と漬物、パンとお茶、うどんだけ。手軽な主食に寄っていくのは、たんぱく質が抜け落ちる典型的なパターンです。
食べられない理由は「食欲がない」だけではありません
ここを取り違えると対策がずれます。実際には次のような原因が重なっています。
【歯や入れ歯の問題】歯が欠けている、入れ歯が合わずに痛い。硬いものを避けるうちに肉や野菜が減ります。
【飲み込む力の低下】むせる経験をすると、本人が無意識に食事を避けるようになります。
【薬の影響】服用している薬の副作用で食欲が落ちることがあります。
【心理的な要因】配偶者との死別、独居、外出の減少。ひとりで食べる食事は、量も品数も減っていきます。
まず歯科の受診と、お薬手帳を持っての薬剤師への相談。この2つは、献立を工夫するより先に効くことがあります。
むせるようになったら、形態を落とす前に相談を
「むせるから、とりあえず全部ミキサーにかけよう」。心配のあまりこうされるご家族がいますが、必要以上に形態を落とすと、食べる楽しみも噛む力も同時に失われます。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「嚥下調整食分類2021」では、食事の形態が段階に分けられています。おおまかには、コード1jが均質でなめらかなゼリー状、コード2がピューレやペースト状、コード3が形はあるけれど舌で押しつぶせるもの、コード4が箸やスプーンで切れるやわらかさ、という並びです。とろみも薄いとろみ・中間のとろみ・濃いとろみの3段階に整理されています。
大切なのは、この段階を自己判断で決めないことです。まずはかかりつけ医、歯科、言語聴覚士、ケアマネジャーに相談してください。適切な段階が分かれば、それを基準に市販品や配食を選べるようになります。この分類は共通言語として作られたものなので、「うちの親はコード3です」と伝えられれば、話が早くなります。
たんぱく質は「毎食に分けて」入れる
1日の合計だけを見て安心してはいけません。夕食にまとめて肉を食べても、体は使いきれません。朝・昼・夕のそれぞれにたんぱく質源を入れることが大切です。
【朝】卵1個、納豆1パック、ヨーグルト、牛乳コップ1杯
【昼】ツナ缶、鮭の切り身、豆腐、ちくわ
【夕】肉か魚の主菜
量の感覚をつかむには、卵1個で約6グラム、納豆1パックで約7グラム、豆腐半丁で約10グラム、鮭の切り身1切れで約18グラム、と覚えておくと便利です。女性の推奨量50グラムは、この積み重ねで届く数字です。
食が細い方には、量を増やすのではなく密度を上げます。味噌汁に卵や豆腐を落とす、ご飯にしらすやきなこを混ぜる、牛乳をスキムミルクで濃くする。同じ一口でも中身が変わります。
作る側が続かないときは
ここまで書いてきたことは、作る人がいて初めて成り立ちます。ところが現実には、離れて暮らしていて毎日は通えない、通えても仕事帰りに一から作る余力がない、というご家庭がほとんどです。
無理をして数週間だけ完璧な食事を用意しても、続かなければ意味がありません。低栄養は毎日の積み重ねで進むものなので、対策も毎日続く形でなければ効きません。
だからこそ、外部の力を組み合わせる前提で考えてください。選択肢は主に3つあります。
【自治体の配食サービス】市区町村が実施しているものがあり、安否確認を兼ねている場合もあります。まずお住まいの市区町村の高齢福祉担当窓口に問い合わせてください。所得や要介護度の要件があることが多いです。
【訪問介護の生活援助】要介護認定を受けていれば、ヘルパーによる調理を利用できます。ケアマネジャーに相談してください。
【民間の宅配食】栄養価が計算済みで、やわらかさの段階を選べるものもあります。冷凍で届くので、まとめて受け取って必要な日に使えます。
特に3つ目は、飲み込みや持病への配慮が必要な段階になると力を発揮します。カロリーやたんぱく質、塩分が管理されている商品を選べば、家族が栄養計算をしなくて済みます。
※以下は広告を含みます。
300箇所以上の病院や介護施設でもご利用あり【メディカルフードサービス】
まとめ
高齢期は、痩せることが良いことではありません。65歳以上の目標BMIは21.5〜24.9、たんぱく質の推奨量は男性60グラム・女性50グラム、エネルギーに占める割合の目標量は15〜20パーセントです。
半年で体重の5パーセントが減っていたら、様子見ではなく相談してください。原因が歯や薬にあることもあります。むせが出てきたら自己判断で形態を落とさず、専門職に段階を判断してもらう。そして何より、対策は毎日続く形にすること。
食事が整うと、在宅で過ごせる期間は確実に延びます。それでも支えきれなくなったときのために、住まいブリッジでは愛知県西三河地域と岐阜県各地域の高齢者施設を、地域別・施設種別から検索できます。食事の形態にどこまで対応してもらえるかは、施設選びの重要な確認事項です。見学の際にぜひ聞いてみてください。
よくある質問
Q. 食が細いのですが、サプリメントで補ってもよいですか? A. 食事で足りない分を補う目的なら選択肢になります。ただし持病や服薬がある場合は、かかりつけ医か薬剤師に確認してください。まずは食事の形を整えるほうが優先です。
Q. 配食サービスは介護保険で使えますか? A. 配食そのものは介護保険給付の対象外です。市区町村が独自に実施している助成付きの配食と、全額自己負担の民間サービスがあります。窓口で確認してください。
Q. 体重が減っているのに本人が病院に行きたがりません。 A. 体重減少は病気が隠れているサインのこともあります。「栄養の相談で」という切り口だと受け入れられることがあります。ケアマネジャーがいれば、訪問診療や訪問栄養食事指導の選択肢も相談できます。
Q. 施設に入れば食事の心配はなくなりますか? A. 施設では栄養管理された食事が提供されますが、対応できる形態の幅は施設によって差があります。きざみ食やミキサー食、とろみ対応、経管栄養まで見てもらえるかは、見学時に必ず確認してください。
あわせて読みたい
老人ホーム見学、当日は何を見る?契約前に必ず確認したい12のこと
特養の申し込み、早く出せば早く入れる?入所順位が決まるしくみと待機中にできること
特養・老健・サ高住・住宅型有料、結局どう違う?費用と入居条件を1枚の表で比較
入居が決まってからが本番|契約前に必ず確認したい4つの権利と、入居当日までにやること
※本記事の内容は2026年8月時点の一般的な情報として整理したものです。栄養の目安は健康な高齢者を想定したもので、腎臓病や糖尿病などの持病がある場合はたんぱく質や塩分の制限が必要になることがあります。実際のご判断は、かかりつけ医、管理栄養士、担当のケアマネジャーにご相談ください。配食サービスの有無や要件は市区町村によって異なります。
新着情報一覧へ戻る
同じテーマの記事
施設さがし
2025.05.19 ケアマネージャー視点で見る!施設見学のチェックポイントとは?
施設さがし
2025.05.28 【退院後すぐに入居したい】高齢者向け介護施設の選び方ガイド
施設さがし
2025.05.31 【病気があっても入居できる?】介護施設への入居と健康状態について
施設さがしのご相談はこちら(無料)
お住まいの地域から施設をさがす