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入居が決まってからが本番|契約前に必ず確認したい4つの権利と、入居当日までにやること

見学を重ね、申し込みを出し、ようやく「入居できます」と連絡が来た。ほっとするのはここまでで、ご家族にとっての本番はここから始まります。契約書にサインする日と、入居する日までの短い期間に、決めることと手続きが一気に集まるからです。
このとき知っておいていただきたいのは、入居する方とご家族には法律で守られた権利がある、ということです。あとから「そんな話は聞いていなかった」となりやすい部分ほど、実は制度でルールが決まっています。ここでは契約前に必ず確認したい4つの権利と、入居日までにやることを整理します。
①入居して90日以内なら、前払金は戻ってきます
有料老人ホームに入居一時金などの前払金を支払った場合、入居から3か月(おおむね90日)以内に契約を解除したとき、またはその期間内に入居者が亡くなったときは、事業者は前払金を返還しなければならないと決まっています。老人福祉法第29条とその施行規則にもとづくルールで、一般に「短期解約特例」と呼ばれています。
返ってくるのは前払金の全額ではなく、実際に住んだ期間の家賃や介護サービスにかかった費用など、省令で定められた分を差し引いた残りです。それでも、入ってみて合わなかったときに何百万円もが戻らないという事態を防ぐための仕組みです。
注意していただきたいのは、この期間を短くするような取り決めは認められていないという点です。「解約の申し出は◯日前まで」といった予告期間を理由に、返還の対象になる期間が実質的に削られてはいけないことになっています。契約書と重要事項説明書に、この90日の扱いがどう書かれているかを必ず読んでください。
②前払金には「保全措置」が義務づけられています
もうひとつ、前払金についての権利があります。事業者が倒産するなどして前払金を返せなくなったときに備え、あらかじめ銀行保証や信託などの形でお金を守っておく「保全措置」です。老人福祉法第29条第7項にもとづく義務で、まだ償却されていない金額か500万円のいずれか低いほうが保全の対象になります。
方法は主に4つあり、銀行等が返還債務を連帯保証する銀行保証、保険会社が損害を補う保証保険、信託会社にお金を預ける信託契約、高齢者福祉を目的とした法人との保全契約があります。どの方法をとっているかは重要事項説明書に書かれていますので、「保全措置あり」と書いてあるだけで済ませず、方法と金額まで見てください。
ただし、この義務が課されているのは2006年(平成18年)4月以降に設置されたホームです。それより前から運営しているホームでは努力義務にとどまるため、古くからあるホームを検討する場合ほど、保全措置の有無をご自身で確認する必要があります。
③重要事項説明書は、契約前に受け取って持ち帰れます
重要事項説明書は、そのホームの運営体制、職員配置、費用、サービス内容、過去の入退去の状況までを都道府県の定めた様式でまとめた書類です。契約の前に交付し、説明することが事業者に求められています。
大切なのは、その場で読んで署名する必要はないということです。持ち帰って、ご家族で読み合わせ、疑問点をまとめてから質問して構いません。契約を急がせるような対応があれば、それ自体が判断材料になります。
見るべき箇所は、職員の人数と夜間の体制、前払金の算定根拠と償却期間、月額費用に含まれるものと別途かかるもの、そして退去を求められる条件です。特に「どういう状態になったら退去になるのか」は、入居してから知って困ることが最も多い項目です。
④住民票を移しても、介護保険は元の市町村のままです
市外・県外の施設に入るとき、「住民票を移したら介護保険はどうなるのか」というご質問をよくいただきます。ここには住所地特例という仕組みがあり、対象となる施設に入居して住所を移した場合でも、保険者は入居前に住んでいた市町村のままになります。
対象になるのは、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護医療院と、有料老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホーム(ケアハウス等)です。サービス付き高齢者向け住宅も、老人福祉法上の有料老人ホームに該当する届出がされていれば対象になります。一方で、入居定員29人以下の地域密着型特定施設は対象外です。
保険者が変わらないということは、これまでと同じ市町村の窓口で手続きが続くということです。介護保険負担限度額認定などの申請先も元の市町村になりますので、入居先の役所ではなく元の市町村へ相談してください。施設が対象かどうかは市町村によって判断が分かれることもあるため、入居前に必ず確認しておくと安心です。
入居日が決まったら、当日までにやること
契約が済んだら、入居日までの2〜4週間で次のことを進めます。
【役所の手続き】転出・転入届/介護保険被保険者証の住所変更(住所地特例の届出を含む)/後期高齢者医療や年金の住所変更/負担限度額認定の申請先の確認
【いま使っているサービスの整理】担当ケアマネジャーへの入居日の連絡/訪問介護・デイサービス・福祉用具レンタルの解約日の調整/レンタル用具の返却日の手配
【医療の引き継ぎ】かかりつけ医からの診療情報提供書/お薬手帳と現在の処方内容/通院を続けるのか、施設の協力医療機関に移すのかの相談
【持ち物の準備】衣類と日用品すべてへの記名/使い慣れた寝具やクッションの持ち込み可否の確認/写真や小物など、居室を本人の場所にするもの
【ご実家のこと】郵便物の転送手続き/新聞・電気・ガス・水道の扱い/空き家になる期間の戸締まりと管理
このうち見落とされがちなのが、レンタル福祉用具の返却日の調整と、記名です。特に衣類は施設で洗濯される場合が多く、名前がないと紛れてしまいます。入居日の直前は慌ただしくなるので、記名だけは早めに終わらせておくことをおすすめします。
それでも、入居日までの数週間は手薄になります
ここまでの手続きは、ご家族が動くことを前提に書きました。けれども実際には、入居が決まった時点でご本人の状態が下がっていることが多く、この数週間がいちばん在宅の負担が重くなります。
しかも、介護保険で頼める内容には枠があります。役所や銀行への付き添い、通院の同行、荷物の運び出し、入居当日の移動の付き添いといった場面は、介護保険の訪問介護では原則として対応できません。区分支給限度基準額に達していれば、そもそも回数を増やすこともできません。
この部分を埋めるのが、介護保険を使わない自費の介護サービスです。ずっと契約する必要はなく、「入居日までの3週間だけ」「通院の日だけ」といった割り切った使い方ができます。ご家族が仕事を休めない日に、通院の付き添いだけを頼むといった依頼の仕方も可能です。
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まとめ
入居が決まってからの期間は、決めることが多いわりに時間がありません。だからこそ、契約書にサインをする前に、90日以内の解約と前払金の返還、前払金の保全措置、重要事項説明書を持ち帰って読むこと、住所地特例の4点だけは確認してください。いずれも制度で決まっている話であり、遠慮して聞かないでいる理由はありません。
そのうえで、役所の手続き、いま使っているサービスの整理、医療の引き継ぎ、持ち物、ご実家のことを順に進めれば、入居当日に慌てずに済みます。
よくある質問
Q. 90日以内に解約したら、支払ったお金は全額戻りますか。
A. 全額ではありません。実際に住んだ期間の家賃や介護サービスにかかった費用など、省令で定められた分を差し引いた残りが返還されます。差し引く項目と計算方法は契約書に書かれていますので、契約前に確認してください。
Q. 重要事項説明書はもらえますか。その場で返さないといけませんか。
A. 契約前に交付して説明することが事業者に求められており、持ち帰って読んで構いません。ご家族で読み合わせ、疑問点をまとめてから質問しても問題ありません。
Q. 施設に入ると、介護保険の手続きの窓口はどこになりますか。
A. 住所地特例の対象施設であれば、保険者は入居前の市町村のままです。負担限度額認定などの申請も元の市町村の窓口になります。対象かどうかは施設の種類によって異なるため、入居前に市町村へ確認してください。
Q. 入居日までに、いま使っているデイサービスや福祉用具はどうすればよいですか。
A. 担当のケアマネジャーに入居日を伝え、解約日と福祉用具の返却日を調整してもらいます。レンタル用具は返却の手配に日数がかかることがあるため、入居日が決まった時点で連絡してください。
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※本記事の内容は2026年9月時点の制度にもとづいています。前払金の扱いや退去の条件は施設ごとの契約内容によって異なり、住所地特例の運用も市町村によって判断が分かれることがあります。実際の手続きは、契約前に施設とお住まいの市町村へ直接ご確認ください。
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