お金のこと

2026.08.24

「施設の費用が払えない」を防ぐ4つの公的制度|負担限度額認定・高額介護サービス費のしくみと申請方法

費用の「相場」は、制度を使う前の金額です

特別養護老人ホーム(特養)なら月9万円台から、住宅型有料老人ホームなら12万〜30万円程度。前回の記事で施設タイプごとの費用相場を整理しましたが、実際にご家族から一番多くいただくご相談は「その金額を年金だけで払えるだろうか」というものです。

ただ、この金額はあくまで「制度を何も使わなかった場合」の目安です。介護保険には、所得や資産に応じて負担を大きく下げる公的なしくみが用意されていて、条件に当てはまれば月に数万円単位で負担が変わることも珍しくありません。しかもその多くは、自分から申請しなければ適用されない制度です。

この記事では、施設入居を検討するときに必ず押さえておきたい4つの制度を、対象になる方と申請先とあわせて整理します。

負担限度額認定・高額介護サービス費・高額医療高額介護合算療養費・社会福祉法人等の軽減の4制度を、対象と申請先でまとめた図

制度① 負担限度額認定ー食費と居住費が下がる

介護保険施設の月額費用は、大きく「介護サービス費」「食費」「居住費」「日常生活費」に分かれます。このうち食費と居住費は原則として全額自己負担ですが、住民税非課税世帯などの条件を満たす方には、1日あたりの負担限度額が設定されます。これが負担限度額認定です。

対象となるのは、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設(老健)、介護医療院、そしてショートステイ(短期入所)です。サービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホーム、グループホームは対象外となります。

負担段階は第1段階から第4段階まであり、第3段階はさらに①と②に分かれます。判定は所得だけでなく預貯金額も見られる点が特徴で、基準額は本人のみの場合で第1段階1,000万円以下、第2段階650万円以下、第3段階①550万円以下、第3段階②500万円以下(配偶者がいる場合はそれぞれ2,000万円・1,650万円・1,550万円・1,500万円以下)となっています。

【食費の負担限度額(施設入所・1日あたり)】第1段階300円/第2段階390円/第3段階①680円/第3段階②1,420円

【居住費の負担限度額(特養・1日あたり)】ユニット型個室:第1・2段階880円、第3段階①1,370円、第3段階②1,470円/従来型個室:第1段階380円、第2段階480円、第3段階①880円、第3段階②980円/多床室:第1段階0円、第2段階・第3段階①430円、第3段階②530円

たとえば第2段階でユニット型個室に入居した場合、食費390円+居住費880円で1日1,270円、30日でおよそ3万8千円です。認定を受けていなければ同じ部屋で月十数万円かかることを考えると、軽減の効果は非常に大きいことがわかります。

なお住民税課税世帯は第4段階となり、この軽減は受けられません。申請先はお住まいの市区町村の介護保険担当窓口で、通帳の写しなど資産を確認できる書類が必要です。有効期間は原則として毎年8月から翌年7月までで、毎年の更新申請が必要になります。

制度② 高額介護サービス費ー介護サービス費に月額の上限

1か月に支払った介護サービスの自己負担額が上限を超えた場合、超えた分が後から払い戻されるのが高額介護サービス費です。負担限度額認定と違い、住民税課税世帯でも対象になるのが大きなポイントです。

【自己負担の上限額(月額)】課税所得約690万円以上:140,100円(世帯)/課税所得約380万円〜690万円未満:93,000円(世帯)/住民税課税〜課税所得約380万円未満:44,400円(世帯)/住民税非課税世帯:24,600円(世帯)/住民税非課税で年金収入等が80万円以下等の方:15,000円(個人)/生活保護受給者:15,000円(個人)

ただし対象は介護保険サービスの自己負担分に限られます。施設の食費・居住費、おむつ代や理美容代などの日常生活費、福祉用具の購入費、住宅改修費、区分支給限度基準額を超えて全額自己負担になった分は対象外です。

該当すると市区町村から申請の案内が届き、一度申請すれば以降は該当月に自動的に振り込まれる自治体がほとんどです。ただし2年の時効があるため、案内が届いたら早めに手続きしてください。

制度③ 高額医療・高額介護合算療養費ー1年分の医療費と介護費を合算

入退院を繰り返しながら施設を利用している方に、特に知っておいていただきたい制度です。毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間について、医療保険と介護保険の自己負担額を合算し、限度額を超えた分が払い戻されます。

【70歳以上の年間限度額】年収約1,160万円以上:212万円/年収約770万〜1,160万円:141万円/年収約370万〜770万円:67万円/年収約156万〜370万円:56万円/住民税非課税世帯:31万円/住民税非課税かつ所得が一定以下:19万円

申請先は、国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入している方は市区町村、被用者保険の方は加入先の保険者です。医療と介護の窓口が分かれているため見落とされやすく、対象になっているのに申請していないケースが少なくありません。

制度④ 社会福祉法人等による軽減と医療費控除

社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームなどでは、低所得で生計が困難な方を対象に、介護サービス費・食費・居住費を原則として4分の1軽減する制度があります。実施するかどうかは法人の申し出によるため、すべての施設で使えるわけではありませんが、市区町村で確認証の交付を受けたうえで施設に提示すれば適用されます。気になる施設があれば「社会福祉法人等利用者負担軽減の対象施設ですか」と直接尋ねてみてください。

また、特養・老健・介護医療院の施設サービス費や食費・居住費の一部は、確定申告の医療費控除の対象になる場合があります。施設が発行する領収書に控除対象額が記載されていますので、必ず保管しておきましょう。世帯全体の医療費と合わせると、思わぬ還付につながることがあります。

サ高住・住宅型有料老人ホームを検討している場合

民間の住まいを検討している場合、高額介護サービス費と高額医療・高額介護合算療養費は利用できますが、食費・家賃を下げる負担限度額認定は使えません。つまり「制度で下げる」余地が公的施設に比べて小さいということです。

そのため民間施設では、入居後に制度でなんとかするのではなく、最初から支払い続けられる価格帯を選ぶことが何より重要になります。ご本人の年金月額に、取り崩せる資産を想定入居年数で割った金額を足して、月々に出せる上限を先に出しておくと、施設選びの軸がぶれません。

申請の前に確認しておきたいこと

世帯分離をすると負担段階が下がる場合がありますが、国民健康保険料や高額療養費など他の負担に影響することがあります。自己判断せず、必ず市区町村の窓口に相談してください。

預貯金の確認は本人名義だけでなく、配偶者名義の口座も対象になります。申告漏れがあると認定が取り消されることもあるため、正確に申告しましょう。

負担限度額認定は毎年更新が必要です。更新を忘れると8月から全額自己負担に戻ってしまいます。

施設から提示される見積書は、制度を適用する前の金額で作られていることが多くあります。「負担限度額認定を受けた場合はいくらになりますか」と必ず確認してください。

それでも制度では埋まらない部分があります

ここまで4つの制度を見てきましたが、いずれも介護保険と医療保険の枠の中の話です。実際のご家庭では、その枠に収まらない負担が残ります。

たとえば特養に申し込んで順番を待つ間、在宅で支えなければならない期間があります。この間、介護保険のサービスは要介護度ごとの支給限度額までしか使えず、超えて頼んだ分は全額自己負担です。通院の付き添い、入院中の身の回りの世話、家族が留守にする間の見守りなどは、そもそも介護保険の対象外です。

この「制度では埋まらない部分」を担うのが、介護保険外の自費サービスです。全額自己負担になる代わりに、時間も内容も自由に決められます。ずっと使い続ける前提ではなく、入居を待つ数ヶ月だけ、あるいは家族が仕事を休めない日だけ、といった割り切った使い方もできます。

※以下は広告を含みます。介護保険外のサービスを検討する場合は、対応エリアと料金体系を先に確認しておくと比較しやすくなります。

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まとめ

費用の相場表だけを見て「うちには無理だ」と判断してしまうのは、とてももったいないことです。特養をはじめとする介護保険施設には、所得と資産に応じた軽減のしくみが何重にも用意されています。しかもそのほとんどが申請主義、つまり知って申請した人だけが使える制度です。

まずはお住まいの市区町村の介護保険担当窓口で、ご本人がどの負担段階に当てはまるかを確認するところから始めてみてください。段階がわかれば、支払える金額の上限が見えて、施設選びは一気に現実的になります。

住まいブリッジでは、愛知県西三河地域と岐阜県各地域の高齢者施設を、地域別・施設種別から検索できます。今回ご紹介した制度が使える介護保険施設か、民間の住まいかも含めて、条件に合う施設をお探しください。

よくある質問

Q. 負担限度額認定は申請すれば誰でも受けられますか? A. いいえ。原則として世帯全員が住民税非課税であることに加え、預貯金額が段階ごとの基準以下であることが必要です。住民税課税世帯の方は第4段階となり、軽減はありません。

Q. 高額介護サービス費は毎月申請が必要ですか? A. 初回に申請すれば、以降は該当した月に自動的に振り込まれる自治体がほとんどです。ただし2年の時効があるため、案内が届いたら早めに手続きしてください。

Q. サ高住や住宅型有料老人ホームでも食費・居住費の軽減は受けられますか? A. 負担限度額認定の対象は特養・老健・介護医療院・ショートステイに限られます。サ高住や住宅型有料老人ホームの家賃や食費は対象外です。

Q. 親の預貯金が基準を少し超えています。ほかに使える制度はありますか? A. 高額介護サービス費と高額医療・高額介護合算療養費、医療費控除には預貯金の要件がありません。まずはこの3つの適用状況を確認してみてください。

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※本記事の金額・要件は2026年8月時点の一般的な情報として整理したものです。負担限度額や上限額は制度改正や自治体の運用によって変わることがあり、施設種別・居室タイプによっても異なります。実際のご検討時は、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口および各施設への直接確認をおすすめします。

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