お金のこと

2026.09.21

入居した後に「お金が続かない」と気づいたとき|施設を替える前に確かめたい5つのこと

ご相談のなかで、いちばん言い出しにくそうにされるのがお金の話です。

入居を決めたときは、何とかなると思っていた。

けれど一年、二年と経つうちに、通帳の減り方が思っていたより速い。

そんなお話を、これまで何度もうかがってきました。

たいていの方が、最初に「もっと安いところへ移すしかない」とおっしゃいます。

そのお気持ちは、よくわかります。

ただ、移ることにも移るなりの負担がかかります。

本人の環境が変わり、手続きが増え、入居のときの費用がもう一度必要になることもあります。

ですので私は、まず先に確かめていただきたいことがある、とお伝えしています。

今回はその順番のお話です。

最初に、月々の支払いを3つに分けてみる

請求書を「合計いくら」で見ていると、手の打ちようがないように感じます。

まず、次の3つに分けてみてください。

【1】介護保険のサービスを使ったことに対する自己負担

【2】部屋代(居住費・家賃)と食費

【3】それ以外(おむつ代・医療費・理美容代・日用品など)

なぜ分けるのかというと、負担を軽くする制度が、この3つでそれぞれ別に用意されているからです。

どこが重いのかがわかると、どの制度を当たればいいのかも見えてきます。

【1】介護保険の自己負担には、ひと月の上限があります

高額介護サービス費という制度です。

ひと月に支払った介護サービスの自己負担が一定額を超えると、超えた分が後から戻ってきます。

上限額は、世帯の課税状況で決まります。名古屋市が公表している区分は、次のようになっています。

生活保護を受けている方など/15,000円(個人)

世帯全員が市町村民税非課税/24,600円

課税所得380万円未満/44,400円

課税所得380万円以上690万円未満/93,000円

課税所得690万円以上/140,100円

一度申請しておけば、以後は超えた月ごとに自動で口座へ振り込まれる自治体が多いです。

ここで気をつけたいのは、この制度の対象は介護サービスの自己負担だけだという点です。

部屋代も、食費も、おむつ代も、ここには入りません。

「上限があると聞いたのに請求が減らない」と言われる方の多くは、ここで行き違いが起きています。

【2】部屋代と食費を下げられることがあります

負担限度額認定という手続きです。いわゆる補足給付と呼ばれるものにあたります。

世帯全員が市町村民税非課税で、預貯金が一定額以下であれば、部屋代と食費に上限が設けられます。

段階と預貯金の目安は、次のとおりです(単身の場合)。

第1段階/生活保護の方や老齢福祉年金を受けている方/1,000万円以下

第2段階/本人の合計所得金額等が82万6,500円以下/650万円以下

第3段階の①/82万6,500円を超えて120万円以下/550万円以下

第3段階の②/120万円超/500万円以下

名古屋市の例でいえば、ユニット型個室の部屋代は第1・第2段階で1日880円。食費は第1段階で1日300円、第2段階で1日600円です。

月に直すと、差はかなり大きくなります。

ただし、とても大事な条件があります。

この制度が使えるのは、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、地域密着型の特養、そしてショートステイだけです。

介護付有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホームは対象外です。

ご家族が「うちは非課税なのになぜ使えないのか」と困惑されるのは、ほとんどがこのケースです。

【3】社会福祉法人の施設なら、さらに軽減があることがあります

社会福祉法人等による利用者負担軽減という制度があります。

市町村民税が世帯非課税で、収入と預貯金が一定以下であることなどを満たすと、利用者負担がおおむね4分の1軽くなります。老齢福祉年金を受けている方は2分の1です。

埼玉県が示している要件を例に挙げると、年間収入は単身で150万円以下、預貯金等は単身で350万円以下、といった水準です。

注意したいのは、この軽減を申し出ている法人のサービスでなければ使えないことと、要件の細かい部分が自治体によって違うことです。

今の施設が対象になるかどうかは、施設の相談員か市町村の窓口に直接聞くのが確実です。

【4】医療費が重なっているなら、合算という手があります

高額医療・高額介護合算療養費という制度です。

8月から翌年7月までの1年間で、医療保険と介護保険の自己負担を合算し、限度額を超えた分が戻ってきます。

入院が重なった年や、通院が増えた年に効いてきます。

該当しそうな方には市から「支給のお知らせ」が届く自治体が多く、立川市の説明では算定期間のあとの2月以降に通知される、とされています。

通知を待つだけで手続きが進むこともあるので、封書を捨ててしまわないようにしてください。

【5】それでも足りないときに残っている道

ここから先は、ご家族だけで抱えないでいただきたい段階です。

社会福祉協議会の生活福祉資金という貸付があります。低所得世帯や高齢者世帯を対象に、介護サービスの利用に必要な資金なども対象に含まれています。窓口はお住まいの市区町村の社会福祉協議会です。

生活保護の相談も、選択肢として現実にあります。施設に入っているから受けられない、ということはありません。

世帯分離という言葉を耳にされることもあると思います。

ただ、これは住民票を分ければ負担が下がる、という単純な話ではありません。

実際に生計が別であることが前提ですし、国民健康保険料などが増えて差し引きで損をすることもあります。

安易に勧められたときほど、市町村の窓口で確かめていただきたいところです。

急がないほうがいいこと、してはいけない順番

私がいちばん心配なのは、黙って滞納が続いてしまうことです。

有料老人ホームの契約書には、利用料の支払いが一定期間滞ったときに契約を解除できる、という条項が置かれているのが普通です。

言い出しにくいお気持ちはわかります。

それでも、支払いが苦しくなりそうだと感じた時点で施設の相談員に伝えるほうが、選べる手は多いです。

支払い方法の相談に応じてもらえることもありますし、施設のほうから制度の窓口につないでもらえることもあります。

逆に、急いで安い施設に移った結果、介護の体制が合わずに短期間でまた動くことになった、というお話も聞きます。

移ることは、最後の手段としてとっておいてよいのではないでしょうか。

なぜ、こんなに制度が分かれているのか

少し背景の話をさせてください。

介護保険は、もともと「介護というサービスにかかる費用」を支える制度として設計されています。

一方で、部屋代と食費は、自宅で暮らしていても払うものです。

在宅の方との公平をどう取るかという議論を経て、これらは原則として自己負担へと整理されました。

その結果、低所得の方への手当ては介護保険の給付とは別建ての仕組みとして用意されることになりました。

だから、窓口も申請書も別々なのです。

制度が不親切に見えるのですが、成り立ちを知っておくと「どこに何を聞けばいいか」の見当がつきやすくなります。

まとめ

お金が続かないと感じたとき、やる順番はこうです。

【1】請求の内訳を3つに分ける

【2】高額介護サービス費の申請が済んでいるか確かめる

【3】施設の種類が負担限度額認定の対象かどうかを確かめる

【4】社会福祉法人の軽減、医療との合算が使えないか聞く

【5】足りなければ社協・市町村の窓口へ。その前に施設の相談員へ一言

施設を替えるという判断は、ここまで確かめたあとでも遅くありません。

まずは請求書を1枚、手元に出すところから始めてみませんか。

次回は、要介護認定を申請してから結果が出るまでに何が起きているのかを書きます。

よくある質問

Q. 高額介護サービス費は、毎月申請が必要ですか。

A. 多くの自治体では初回の申請だけで、以後は超えた月ごとに自動で振り込まれます。名古屋市もその扱いです。お住まいの市町村の案内を確認してください。

Q. 有料老人ホームでも部屋代の補助は受けられますか。

A. 負担限度額認定の対象は特養・老健・介護医療院・地域密着型特養・ショートステイに限られ、有料老人ホームやサ高住、グループホームは対象外です。ただし高額介護サービス費は種類にかかわらず使えます。

Q. 預貯金は、どうやって確認されるのですか。

A. 負担限度額認定の申請では、通帳の写しなどの提出を求められます。基準額を超えていると認定は受けられません。

Q. 支払いが遅れたら、すぐに退去になりますか。

A. すぐに、というものではありませんが、契約書には支払いが一定期間滞った場合の解除条項が置かれているのが一般的です。遅れそうな段階で施設へ相談してください。

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※この記事は2026年9月時点の制度にもとづいています。金額の区分や要件は改定されることがあり、社会福祉法人等による軽減など自治体ごとに運用が異なる制度もあります。実際の手続きは、お住まいの市町村の窓口でご確認ください。

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