施設さがし

2026.09.05

親の施設が決まった、と思ったら「身元保証人はどなたですか」|いないときにできること

見学も終えて、ここにしようと決めて、あとは契約書にサインするだけ。

そのつもりで座った机の向こうから、「身元保証人はどなたになりますか」と聞かれる。

私が相談を受けてきた中で、いちばん多くのご家族がつまずくのが、この一言です。

あの一言で、頭が真っ白になる

実は私も、最初は身構えました。

保証人と聞いて思い浮かべたのが、借金の連帯保証だったからです。

親の施設費用を、自分がまるごと背負うことになるのだろうか。もし払えなくなったらどうなるのか。

そんな不安が先に立って、その場では何も聞き返せませんでした。

でも、あとから調べてみると、思っていたのとは少し違ったんです。

順番に整理していきますね。

身元保証人は何をする人なのか

まず、施設や病院が身元保証人に期待している役割を分けてみます。

厚生労働省の研究班がまとめたガイドラインでは、6つの項目に整理されています。ご家族向けに言い直すと、だいたい次の4つです。

【連絡】急変したときの連絡先になる

【日々の実務】入院・入居中に必要な物を届ける、費用の支払いを引き受ける

【出口の相談】退院や退去のとき、次の行き先を一緒に考える

【最後の引き取り】亡くなったあとのご遺体やお荷物を引き取る

こう並べてみると、ぼんやりした「保証人」という言葉が、少し具体的になりませんか。

そしてもうひとつ、知っておいていただきたいことがあります。

医療行為に同意する権限は、身元保証人にはありません。

手術を受けるかどうか、延命治療をどうするか。こうした判断は、ご本人だけのものです。同じガイドラインに、第三者に同意の権限はないとはっきり書かれています。

成年後見人(判断力が落ちた方の財産や契約を代わりに守る人)にも、この権限はありません。

「全部を背負わされる」わけではない。

まずここを押さえておくだけで、ずいぶん気持ちが軽くなると思います。

実は、いないことだけを理由に断ることはできません

ここからが、あまり知られていない話です。

2025年7月30日、厚生労働省が全国の自治体へ通知を出しました。介護保険最新情報Vol.1409という文書です。

そこにはこう書かれています。身元保証人等がいないことのみを理由に入所を断ったり、退所を求めたりするのは、不適切な取扱いである。

介護保険施設の基準では、正当な理由なくサービスの提供を拒んではならないと決まっています。そして身元保証人がいないことは、その「正当な理由」には当たらない。国がそう明示したわけです。

では、これで安心かというと。

正直に書きます。現実はまだ追いついていません。

総務省の関東管区行政評価局が、病院と施設あわせて1,198か所から回答を得た調査があります。そのうち92.4パーセントが、身元保証人を求めていました。

さらに施設782か所に限ると、20.6パーセントが「身元保証人がいない場合は入院・入所をお断りする」と答えています。5か所に1か所です。

建前と実態には、まだ開きがある。

それでも、この通知が出たことには意味があります。断られたときに「国はこう言っています」と言える根拠が、手元にできたからです。

「私にはできません」と言われたときに

とはいえ、通知を振りかざして交渉するのは、正直しんどいですよね。

私がご家族にお伝えしているのは、もっと手前の工夫です。

役割を分解して、渡せるところだけ渡す。

さきほど4つに分けましたが、ここが効いてきます。「身元保証人をやってほしい」と丸ごと頼むと、たいてい断られます。責任の範囲が見えないからです。

でも、こう聞くとどうでしょう。

「急変したときの電話だけ、受けてもらえませんか」

これなら引き受けてくれる親族が見つかることがあります。遠方のきょうだい、甥や姪。これまで頼めなかった相手にも、話を持っていきやすくなります。

費用の部分も同じです。口座振替や前払いにできないか、施設に相談してみてください。連帯保証という形をとらずに済む場合があります。

そして施設によっては、役割ごとに別の人でよいこともあります。

連絡先は妹、支払いは自分、というように。最初から「一人で全部」と決めつけないでください。

頼れる人が本当にいないときは

それでも埋まらないことがあります。おひとりで暮らしてこられた方や、身寄りのない方の場合です。

選択肢は、大きく3つです。

【成年後見制度】判断力が落ちてきた方の財産管理や契約を、家庭裁判所が選んだ人が代わりに担う制度です。費用の支払いや契約の場面では力になります。

ただし、さきほど書いたとおり医療同意はできません。身元保証人の代わりに全部をカバーするものではない、と理解しておいてください。

【市区町村と地域包括支援センターに相談する】地域包括支援センター(介護の相談をまとめて受けてくれる、市区町村の窓口です)に、まず電話してみてください。

先ほどの2025年の通知では、こうした相談を受けたら適切に助言するよう、市町村と地域包括支援センターに求めています。相談していい場所だと国が言っているわけです。

【身元保証サービスを使う】民間の事業者が、緊急連絡先や費用の支払い、亡くなったあとの手続きまでを引き受けるサービスです。

以前は玉石混交と言われていましたが、2024年6月に国がガイドラインをつくり、事業者が守るべきことがはっきりしました。

身元保証サービスを選ぶなら、ここだけは確認したい

そのガイドラインで、国が事業者に求めていることがあります。裏を返せば、私たちが確認すべきチェック項目です。

【契約書】契約書をきちんと作って渡してくれるか

過去の相談事例では、契約書が交付されていないケースがありました。口約束で始めないでください。

【料金の内訳】入会金・預託金(先に預けておくお金です)と、使った都度払う費用が、分けて書かれているか

【預託金の管理】預けたお金を、事業者自身の運転資金と分けて管理しているか

ガイドラインは、信託銀行の信託契約を最も望ましい方法として挙げています。管理状況を定期的に報告してくれるかも聞いてみてください。

【解約したとき】途中でやめたときの返金の決まりが、契約書に書いてあるか

【立ち会い】契約の場に、ケアマネジャーやご親族など第三者に同席してもらえるか

ガイドラインも、第三者の立会いを求めることを提案しています。一人で契約書に向き合わないほうがいい、ということですね。

この5つを聞いてみて、答えが濁るようなら、そこは選ばなくていいと思います。

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急がなくていい場合もあります

最後に、ひとつだけ歯止めを。

入居の直前に慌てて契約しないでください。

身元保証サービスは、亡くなったあとの手続きまで含む長期の契約です。国も、契約期間が長く利用者保護の必要性が高い事業だと位置づけています。

数日で決めるようなものではありません。

入居日が迫っていても、まずは施設に「役割を分けられませんか」と相談する。並行して地域包括支援センターに電話する。それからでも遅くないと、私は思っています。

まとめ

身元保証人と言われて頭が真っ白になったら、まず役割を4つに分けてみてください。連絡、日々の実務、出口の相談、最後の引き取り。丸ごとではなく、渡せるところだけ渡す。

医療同意の権限は、身元保証人にも成年後見人にもありません。ここは背負わなくていい部分です。

そして2025年7月の通知で、身元保証人がいないことだけを理由に入所を断るのは不適切だと、国が明示しました。実態はまだ92.4パーセントの施設が求めていますが、交渉するときの根拠にはなります。

どうしても埋まらないときは、市区町村と地域包括支援センターへ。相談していい場所です。

よくある質問

Q. 身元保証人がいないと、施設には入れませんか。

A. 入れないわけではありません。2025年7月30日の厚生労働省の通知で、身元保証人等がいないことのみを理由に入所を拒むのは不適切だと明示されました。ただし実際には求める施設が多いので、断られた場合は市区町村の介護保険担当課や地域包括支援センターに相談してください。

Q. 身元保証人になると、施設の費用を全部払うことになりますか。

A. 契約の書き方によります。連帯保証人として署名すれば支払い義務が生じますが、保証額に上限を設ける決まりがあり、契約書に極度額が書かれているはずです。金額を確認してから署名してください。口座振替や前払いで代替できないか、施設に相談する方法もあります。

Q. 成年後見人がいれば、身元保証人は不要ですか。

A. 施設によって扱いが違います。財産管理や契約の場面では成年後見人が担えますが、医療行為への同意は後見人の業務に含まれていません。緊急連絡先や亡くなったあとの引き取りをどうするかは、別に決めておく必要があります。

Q. 身元保証サービスの費用はどのくらいですか。

A. 事業者によって幅が大きく、入会金・預託金と都度払いの費用に分かれているのが一般的です。金額そのものより、内訳が分けて書かれているか、預託金が事業者の運転資金と分けて管理されているか、解約時の返金の決まりがあるかを確認してください。国のガイドラインが事業者に求めている点です。

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住まいブリッジでは、愛知県西三河地域と岐阜県の高齢者施設を、広告費の多さではなく条件から探せるようにしています。地域や施設種別から候補を絞り込んで、見学のご相談にお使いください。

まずは、契約書に何が書いてあるかを声に出して読むところから始めてみませんか。次回は、入居が決まったあとの持ち込みや面会について書きます。

※本記事の内容は2026年9月時点の一般的な情報です。身元保証人に求める役割や範囲は施設ごとの契約内容によって異なり、成年後見制度の運用や相談窓口の体制も市区町村によって違います。実際の手続きは、入居先の施設とお住まいの市区町村の窓口へ直接ご確認ください。

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