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介護離職を防ぐ|介護休業93日の本当の使い方と、2025年から会社に義務づけられたこと

親の介護が始まったとき、多くの方がまず考えるのが「仕事をどうするか」です。
総務省の就業構造基本調査によると、介護をしている人は全国で約629万人。そのうち働きながら介護をしている人が約365万人で、全体の58.0パーセントにあたります。一方で、介護や看護を理由に過去1年間で仕事を辞めた人は約11万人。そのうち約8万人が女性でした。
辞めた方の多くは、怠けていたわけでも、覚悟が足りなかったわけでもありません。制度の使い方を知らないまま、限界まで自分で抱えてしまった結果です。ここでは、仕事を続けるために使える制度と、その使い方を整理します。
介護休業の93日は「自分が介護をするための休み」ではありません
まず、いちばん誤解されている点からお伝えします。
介護休業は、対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割して取得できます。この93日を「自分が親を介護する期間」と考えて使い切ってしまい、期間が終わっても状況が変わらないまま退職する。これが介護離職のもっとも多いパターンです。
93日は、介護の体制を作るための準備期間です。要介護認定を申請する、ケアマネジャーを決める、サービスを組む、施設を探して申し込む。これらを済ませて、自分が仕事に戻っても回る形にするための時間だと考えてください。
3回に分割できるのは、まさにそのためです。最初にまとめて取るのではなく、たとえば入院や退院のタイミングで10日、サービスの組み直しで2週間、施設入居の準備で3週間、というように、山場ごとに使うほうが実際には持ちます。
介護休業の期間中は、雇用保険から介護休業給付金として賃金の67パーセントにあたる額が支給されます。支給には要件と上限額があるので、金額の詳細は勤務先かハローワークで確認してください。
仕事を続けるために使える制度は5つあります
介護休業だけが制度ではありません。むしろ日常を回すのは、次の4つのほうです。
【介護休暇】対象家族1人につき年5日、2人以上なら年10日。時間単位で取得できます。通院の付き添い、ケアマネジャーとの面談、役所の手続きなど、半日で済む用事に向いています。
【所定外労働の制限】残業の免除を請求できます。請求できる回数に制限がありません。要介護状態が続く限り、繰り返し請求できます。
【時間外労働の制限】残業をゼロにはできない職場でも、1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働を制限できます。
【深夜業の制限】午後10時から午前5時までの労働を制限できます。夜勤やシフトのある仕事で効きます。
【介護休業】前述のとおり、体制づくりのためのまとまった時間。
多くの方が介護休業だけを見て「93日では足りない」と判断してしまいますが、実際に効くのは残業免除と介護休暇の組み合わせです。まずここから使ってください。
2025年4月から、会社の側に義務が増えました
育児・介護休業法が改正され、2025年4月から会社側の義務が強化されました。ご家族の立場から知っておくと、話が通りやすくなります。
【個別の周知と意向確認】介護に直面したことを申し出た従業員に対して、会社は介護休業や両立支援制度の内容、申し出先、給付金について周知し、制度を利用する意向があるかを確認しなければなりません。面談、書面、メールなどの方法で行われます。
【早期の情報提供】40歳前後の従業員に対して、介護休業などの制度と介護保険制度について情報提供することが義務になりました。40歳に達する年度、または40歳到達後1年間のいずれかで実施されます。
【雇用環境の整備】研修の実施、相談窓口の設置、制度利用事例の提供、利用促進方針の周知といった措置を講じることが求められています。
つまり、「介護が始まった」と会社に伝えれば、会社の側から制度を説明する義務があるということです。自分で調べて交渉しなければならない状況ではなくなりました。伝えることをためらわないでください。
40歳になったら、会社から説明があるはずです
早期の情報提供が義務になった意味は小さくありません。
介護は、始まってから調べ始めるのでは遅い分野です。要介護認定の申請から結果が出るまでの期間、地域包括支援センターの場所、施設の種類と費用の相場。これらを何も知らない状態で親が倒れると、判断する時間がないまま決めることになります。
40歳は介護保険料の負担が始まる年齢でもあります。会社から案内があったら、その時点では自分に関係がないと感じても、一度目を通しておいてください。
93日で何をするか
体制づくりの中身を、順番で整理します。
【最初の1週間】地域包括支援センターに連絡します。お住まいの地域の担当窓口が分からなければ、市区町村の介護保険担当課に聞けば教えてもらえます。同時に要介護認定を申請します。認定の結果は法律上30日以内が原則ですが、実際にはそれ以上かかることが多いので、申請日を1日でも早くすることが効きます。
【2〜4週間目】ケアマネジャーを決め、ケアプランを作ります。認定結果が出ていなくても、暫定のプランでサービスを使い始められます。訪問介護、デイサービス、福祉用具のレンタル、必要なら住宅改修まで、この段階で組みます。
【1〜2か月目】自分が仕事に戻った状態を想定して、回るかどうかを試します。ここで穴が見えたら、サービスを足すか、施設を検討するかの判断に入ります。在宅で続けるのか、施設を探し始めるのかを決めるのがこの時期です。
【2〜3か月目】施設を探す場合は、見学と申し込みを進めます。特別養護老人ホームは待機が発生することが多いので、申し込みだけ先に出しておく判断も有効です。
【職場との調整】復帰後に使う制度(残業免除、介護休暇、勤務時間の調整)を、休業が明ける前に上司や人事と話しておきます。復帰してから相談するより、はるかにスムーズです。
それでも埋まらないのが、毎日の食事です
制度とサービスを組んでも、働きながらの介護で最後まで残るのが食事です。
訪問介護の生活援助で調理を頼めますが、回数には限りがあります。デイサービスのない日、土日、夜。誰かが作らなければならない場面は必ず残ります。仕事の帰りに実家に寄って夕食を作り、自宅に戻る。この生活が続けられなくなって離職に至る方が本当に多いところです。
しかも高齢期は、食べる量が落ちること自体がリスクになります。体重が落ち、筋力が落ち、転びやすくなる。この連鎖の入り口が食事です。
ここを埋める手段として、高齢者向けの宅配食があります。栄養価が管理されていて、やわらかさや刻み方を選べるものもあり、冷凍で届くので受け取りの都合もつけやすい。毎日すべてを置き換える必要はなく、「作れない日だけ」という使い方でも、負担のかかり方がはっきり変わります。
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まとめ
働きながら介護をしている人は約365万人、辞める人は年間約11万人います。分けているのは覚悟ではなく、制度を知っていたかどうかです。
介護休業93日は、自分が介護をするための休みではなく、体制を作るための準備期間です。日常を回すのは、回数制限のない残業免除と、時間単位で取れる介護休暇のほうです。
そして2025年4月から、介護に直面したと申し出れば、会社の側から制度を説明する義務が生じました。伝えることが最初の一歩になります。
よくある質問
Q. 介護休業は分割して取れますか。
A. 対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割できます。入院、退院、施設入居など山場ごとに分けて使うほうが実際には持ちます。まとめて取って使い切ってしまうと、その後の山場で使える日数が残りません。
Q. 会社に介護のことを伝えると、評価に響きませんか。
A. 2025年4月から、介護に直面した旨を申し出た従業員に対して、会社は制度の内容を周知し利用の意向を確認する義務を負っています。伝えることが前提の制度設計になっており、申し出を理由とする不利益な取扱いは法律で禁止されています。
Q. 残業の免除は何回でも請求できますか。
A. 所定外労働の制限は、請求できる回数に制限がありません。要介護状態が続いている間は繰り返し請求できます。介護休業と違って日数を消費しないので、まずここから使うのが実際的です。
Q. 要介護認定の結果が出るまで、サービスは使えませんか。
A. 申請していれば、結果を待たずに暫定のケアプランでサービスを使い始められます。想定より軽い認定が出た場合に自己負担が増える可能性はありますが、ケアマネジャーが見込みを立てて調整します。申請を早めることが選択肢の広さに直結します。
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※本記事の内容は2026年9月時点の制度にもとづく一般的な情報です。介護休業給付金の支給要件と上限額、勤務先の就業規則による上乗せの有無、要介護認定にかかる期間は、状況や地域によって異なります。実際の手続きは、勤務先の人事担当、ハローワーク、お住まいの市区町村の窓口へ直接ご確認ください。
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