お金のこと
1割だと思っていたら2割だった|介護保険の負担割合が決まるしくみと、毎年7月に届く紙のこと

「介護は1割負担なんですよね」。
ご相談の場で、何度も聞いた言葉です。
実際、多くの方はそのとおりです。ただ、全員ではありません。
以前、お父様の施設入居を検討されていたご家族が、見積もりを見て固まったことがありました。
頭の中で立てていた計算の、ちょうど2倍だったからです。
原因は単純で、お父様が2割負担の方だった、というだけのことでした。
ご家族は「そんな紙、見た覚えがない」とおっしゃっていました。
毎年7月に届いているはずの、介護保険負担割合証のことです。
今日は、この割合がどう決まるのかを、順を追って見ていきます。
数字が少し多くなりますが、確かめる場所はごく限られています。
毎年7月、薄い紙が1枚届いている
要介護・要支援の認定を受けている方には、市町村から介護保険負担割合証が交付されます。
申請は要りません。7月の中旬から下旬にかけて、認定証とは別に一斉に送られてきます。
有効期間は8月1日から翌年7月31日までの1年間です。
そこに「1割」「2割」「3割」のいずれかが書かれています。
薄い紙なので、介護保険被保険者証と一緒に引き出しに入ったまま、という方が多い印象です。
けれども、サービスの見積もりはこの1文字で倍近く変わります。
もし今、手元にあるなら、一度出して確かめてみてください。
なお、年度の途中で新しく認定を受けた方には、認定結果の通知と一緒に交付されます。
2割も3割も、比較的あたらしい仕組みです
介護保険が始まったとき、利用者の負担は全員が1割でした。
そこに2割負担が入ったのが2015年(平成27年)8月です。
さらに3割負担が加わったのが2018年(平成30年)8月でした。
つまり、ここ10年ほどの間に二段階で増えた、ということになります。
「昔は1割だったのに」という感覚は、記憶違いではありません。
背景には、介護保険を使う方が増え続けている一方で、保険料を負担する現役世代が減っているという事情があります。
所得のある方には多めに負担していただく、という考え方です。
この考え方への賛否はありますが、制度としてはそう組まれています。
判定は「本人の所得」と「世帯の年金収入等」の二段構え
ここが本題です。少しだけ数字が続きます。
3割になるのは、次の両方に当てはまる場合です。
【1】本人の合計所得金額が220万円以上
【2】同じ世帯の65歳以上の方の「年金収入+その他の合計所得金額」の合計が、単身世帯で340万円以上、2人以上の世帯で463万円以上
2割になるのは、次の両方に当てはまる場合です。
【1】本人の合計所得金額が160万円以上
【2】同じ世帯の65歳以上の方の「年金収入+その他の合計所得金額」の合計が、単身世帯で280万円以上、2人以上の世帯で346万円以上
どちらにも当てはまらない方が1割です。
大事なのは、本人の所得だけでは決まらないという点です。
同じ世帯にいる65歳以上の方の収入も合算して見ます。
ご夫婦で暮らしていて、配偶者に一定の年金収入があると、そこで基準に届くことがあります。
なお、40歳から64歳までの第2号被保険者の方は、所得にかかわらず一律1割です。
「合計所得金額」は、手取りとは違います
この言葉でつまずく方がとても多いので、少し補っておきます。
合計所得金額は、地方税法でいう所得の考え方です。
収入から必要経費を差し引いた額で、扶養控除や社会保険料控除を引く前の数字になります。
いわゆる手取りではありませんし、課税所得とも一致しません。
いくつか例外もあります。
土地や建物を売ったときの譲渡所得については、特別控除額を差し引いた後の額で見ます。
また、給与所得や公的年金等に係る所得がある場合は、そこから10万円を控除して判定します。
この10万円の控除は見落とされやすく、ぎりぎりの方だと結論が変わることもあります。
ご自身で計算して不安が残るときは、市町村の介護保険担当窓口に直接聞くのが確実です。
窓口では、課税資料をもとにその場で確認してもらえることがほとんどです。
年度の途中で変わることもあります
負担割合は、原則として毎年8月1日を基準に判定されます。
所得は前年1月から12月まで、世帯構成は基準日の時点で見ます。
ただし、途中で変わる場面もあります。
【1】世帯の方が亡くなったり、転出入があったりして世帯構成が変わったとき
【2】ご本人が65歳になったとき
【3】所得の修正申告などで、判定のもとになる所得が変わったとき
いずれも手続きは要らず、新しい負担割合証が市町村から送られてきます。
ただ、いつから新しい割合が適用されるかは、扱いが分かれます。
世帯構成の変更は翌月から、所得の修正は基準日にさかのぼって、という運用をしている市もあります。
この点は自治体によって説明が違うので、該当しそうなときはお住まいの市町村にご確認ください。
転入された方は、前の住所地に所得を照会してから判定されるため、届くのが少し遅れることがあります。
割合が上がっても、1か月に払う額には上限があります
ここは、知っておくと気持ちがずいぶん違う部分です。
介護保険には高額介護サービス費という仕組みがあります。
1か月に払った利用者負担の合計が上限を超えたら、超えた分が申請により戻ってくる制度です。
上限は世帯の課税状況で分かれます。目安は次のとおりです。
【課税所得690万円以上】140,100円 /【課税所得380万円以上690万円未満】93,000円 /【それ以外の課税世帯】44,400円
【世帯全員が市町村民税非課税】24,600円 /【生活保護を受けている方など】15,000円
非課税世帯のうち特に所得の低い方は、個人単位で15,000円という区分もあります。
つまり、課税所得380万円未満の世帯なら、1割でも3割でも月44,400円で頭打ちになります。
3割になったからといって、負担が単純に3倍まで伸びていくわけではありません。
ただし、この上限に入らない費用があります。
食費・居住費(滞在費)、福祉用具の購入費、住宅改修費、そして区分支給限度額を超えて使った分です。
施設入居の費用が重くなるのは、実はこの食費と居住費のほうが効いていることが多いです。
2割の対象を広げる話は、まだ決まっていません
ニュースで「2割負担の対象が拡大」という見出しを見かけた方もいると思います。
2026年9月の時点で申し上げると、これはまだ決まっていません。
国の社会保障審議会介護保険部会で、判断基準の見直しが続けて議論されている段階です。
令和7年12月にまとめられた同部会の意見でも、結論は出ておらず、引き続き検討するという整理になっています。
2027年度(令和9年度)から始まる第10期の介護保険事業計画の前までに結論を出す、という方針が示されています。
報道では具体的な引き下げ幅の案が出ることもありますが、それは案であって決定ではありません。
決まってから慌てないためにも、今の負担割合証を一度確かめておく。
今できるのは、そこまでだと思います。
保険の中で足りない部分は、はじめから別立てで考える
負担割合の話をしていると、必ず出てくるご質問があります。
「2割になったぶん、使う回数を減らしたほうがいいでしょうか」というものです。
気持ちはよくわかります。ただ、減らした結果、在宅が続かなくなっては本末転倒です。
介護保険には、割合とは別に区分支給限度額という枠もあります。
通院の付き添いや、ご本人の希望に合わせた外出など、保険の対象にならない場面も出てきます。
そうした部分だけを自費のサービスで補って、保険の枠は生活の土台に使う。
そういう組み立て方をされているご家庭もあります。
※以下は広告を含みます。
費用はかかりますので、まずは何にいくらまで出せるかを決めてから検討するのがよいと思います。
まとめ
介護保険の負担割合は、毎年7月に届く負担割合証に書かれています。
有効期間は8月1日から翌年7月31日までの1年間です。
判定は本人の合計所得金額と、同じ世帯の65歳以上の方の年金収入等の、二段構えで行われます。
合計所得金額は手取りでも課税所得でもないので、自己流の計算は当てになりません。
割合が上がっても、高額介護サービス費で1か月の上限が決まっています。
その代わり、食費と居住費は上限の外にあります。
施設の見積もりを比べるときは、負担割合証を手元に置いてからにしてみませんか。
次回は、岐阜県の中濃・飛騨(関・美濃加茂・可児・郡上・高山・下呂・飛騨)で施設をさがすときの考え方を書きます。
よくある質問
Q. 負担割合証が見当たりません。再発行できますか。
A. お住まいの市町村の介護保険担当窓口で再交付を受けられます。ケアマネジャーや施設に聞けば、負担割合そのものは記録から確認できることも多いです。
Q. 世帯分離をすれば1割に戻りますか。
A. 世帯の状況が変われば判定も変わり得ます。ただし、実際の生活の実態を伴わない届出は適切ではありません。生計の実態が本当に分かれているかどうかが基準になりますので、自己判断で動かす前に市町村の窓口でご相談ください。
Q. 2割になると、施設の費用も全部2割になりますか。
A. 2割になるのは介護保険が適用される部分です。食費・居住費・日常生活費は負担割合とは関係なく、施設ごとの金額がそのままかかります。
Q. 夫が3割、妻が1割ということはありますか。
A. あります。判定の1つ目は本人の合計所得金額を見るためです。同じ世帯でも、お一人ずつ割合が決まります。
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※本記事は2026年9月時点の公表資料をもとに書いています。負担割合の判定基準と合計所得金額の取り扱いは厚生労働省および市町村の公表資料、高額介護サービス費の上限額は介護保険最新情報Vol.997(令和3年7月5日)以降の区分によります。年度途中の適用開始時期など、運用の細部は自治体によって異なります。実際の判定は必ずお住まいの市町村の介護保険担当窓口でご確認ください。
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