お金のこと

2026.10.27

「世帯分離をすれば施設代が安くなる」は本当か|負担限度額認定のしくみと、分ける前に確かめたい5つのこと

親の施設の費用を調べていたら、
「世帯分離をすると安くなる」という話が出てきた。
知り合いからも、同じことを言われた。

でも、住民票をいじるのは何となく怖い。
本当に安くなるのか、損をすることはないのか。
そもそも、勝手に分けてしまっていいものなのか。

ご相談の場でも、この質問は本当によくいただきます。
この記事では、世帯分離で何が変わり、何が変わらないのかを、
順番に整理してみます。

世帯分離とは、住民票の「世帯」を分ける届け出です

世帯分離は、同じ家に住んだまま、
住民票の上で親の世帯と子の世帯を別々にする手続きです。
市町村の窓口に「世帯変更届」を出して行います。

ここでいう世帯は、家族の数え方というより、
「暮らしの財布を一緒にしているかどうか」の単位です。
そのため、生計が別であることが前提になります。

同じ家でも分けられるかどうかは、窓口が実態を見て判断します。
扱いは自治体によって違うので、まずは市町村の住民票の窓口で、
分けられるかどうかを聞いてみるのが近道です。

なぜ「安くなる」と言われるのか|負担限度額認定のしくみ

施設に入ると、介護サービスの自己負担とは別に、
居住費(部屋代)と食費がかかります。
この2つを軽くする制度が「負担限度額認定」です。

認定を受けられるのは、おおまかに次の条件にあてはまる方です。

【1】世帯の全員が住民税非課税
【2】配偶者も住民税非課税(別の世帯でも含めて見る)
【3】預貯金などが基準以下

【預貯金などの基準(単身/夫婦)】
第1段階 1,000万円/2,000万円
第2段階 650万円/1,650万円
第3段階① 550万円/1,550万円
第3段階② 500万円/1,500万円

たとえば、親は年金が少なく非課税なのに、
同居する子が働いていて課税されている場合。
同じ世帯のままだと【1】にあてはまらず、認定を受けられません。

世帯を分けると、親だけの世帯が非課税になり、
認定の対象に入ることがある。
「安くなる」と言われるのは、このしくみのためです。

分けても変わらない人がいます

ここがいちばん大事なところです。
世帯分離をしても、次のような場合は認定につながりません。

【配偶者が課税されている】
配偶者は、住民票が別でも判定に含まれます。
父が施設に入り、母が課税されている、というときは対象外です。

【預貯金が基準を超えている】
収入が少なくても、預貯金などが基準を超えると対象外です。
配偶者がいる場合は、配偶者の分も合わせて見ます。

【親自身が課税されている】
親の年金などで住民税がかかっているときは、
世帯を分けても非課税にはなりません。

まずは親の課税の状況と預貯金を確かめてから、
分けることに意味があるかを考えるのがおすすめです。

分ける前に確かめたい5つのこと

【1】国民健康保険料の合計
国民健康保険は世帯ごとに保険料を計算します。
世帯が2つになると、合計が増える場合があります。

【2】勤め先の家族手当や扶養
住民票の世帯とは別の基準のことが多いですが、
会社の規程によっては影響が出ることもあります。

【3】介護保険料の段階
介護保険料は、世帯の課税状況でも段階が決まります。
親の保険料が下がることもあれば、変わらないこともあります。

【4】高額介護サービス費の合算
同じ世帯の利用分は合算して上限を見ます。
夫婦ともに介護サービスを使っているときは、分け方に注意が必要です。

【5】手続きの手間
別の世帯になると、親の住民票や証明書を取るときに
委任状を求められることがあります。

どれが当てはまるかは、家族ごとに違います。
市町村の介護保険の窓口で「分けた場合、認定の段階はどうなりますか」と
具体的に聞いてみると、答えがはっきりしやすいです。

このしくみがある理由

2005年10月から、施設の居住費と食費は、
原則として利用する方の自己負担になりました。
そのとき、収入の少ない方の負担を抑えるためにつくられたのが、この認定です。

その後、預貯金の多い方は対象外とするなど、
条件は少しずつ細かくなってきました。
「本当に支えが必要な方に届くように」という考え方が、土台にあります。

世帯分離は、その条件に合わせて形を整える手段のひとつです。
実態に合っていれば正当な手続きですが、
生計が一緒のまま形だけ分けるのはおすすめしません。

認定は、毎年の申請が必要です

負担限度額認定は、一度受けたら終わりではありません。
多くの市町村では、8月から翌年7月までを1年として、
毎年申請しなおすしくみになっています。

認定は、申請した月の1日から使えるのが一般的です。
入所が決まりそうなら、早めに窓口へ相談しておくと安心です。

まとめ

世帯分離で施設の費用が下がるのは、
親が非課税で、配偶者も非課税で、預貯金が基準以下のときです。
この3つがそろわなければ、分けても認定にはつながりません。

分ける前に、国民健康保険料や手当への影響も一緒に見ておくこと。
迷ったら、まず市町村の窓口で「分けたらどうなるか」を聞いてみてください。
その一回で、ずいぶん見通しが立つと思います。

よくある質問

Q. 同じ家に住んだままでも、世帯分離はできますか?
A. 生計が別であれば認められることがあります。判断は市町村の窓口が行うので、事前に確かめてください。

Q. 有料老人ホームでも、負担限度額認定は使えますか?
A. 対象は特養・老健・介護医療院などの介護保険施設と、ショートステイです。有料老人ホームやサ高住は対象外です。

Q. 世帯分離をしたら、もとに戻せますか?
A. 世帯を一緒にする届け出をすれば戻せます。ただ、短い期間で何度も変えると、実態を確かめられることがあります。

Q. 施設に入って住民票を移した場合は?
A. 施設に住民票を移すと、その時点で親は別の世帯になります。くわしくは下の住民票の記事で整理しています。

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住まいブリッジでは、施設の種類やエリアから施設を探せます。
1か月の費用を内訳で公開している施設もあるので、比べるときの参考にしてみてください。

※この記事は2026年10月時点の制度をもとにしています。負担限度額認定の基準は厚生労働省の基準と各市町村の案内によります。世帯分離の可否や、保険料・手当への影響は自治体や勤め先によって異なるため、各窓口でご確認ください。

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