お金のこと

2026.10.05

入居一時金は、いつ・いくら戻るのか|初期償却と3か月以内の解約、契約前に見る4つの項目

「入居して2か月で、母は病院に移ることになりました」。

そう話してくださった方は、続けてこう言いました。

「払った一時金が、ほとんど戻ってこないと思い込んでいたんです」。

実際には、契約書を一緒に読んでいくと、戻る額はかなり大きいものでした。

入居一時金は、金額が大きいわりに、戻り方を説明される機会が少ないお金だと感じます。

見学のときは費用の総額に目が行き、償却や返還の話まで聞く余裕がないのも自然なことです。

今日は、有料老人ホームの入居一時金が、いつ・どれくらい戻るのかを整理してみます。

施設の名前は挙げません。どの施設の書類にも当てはまる、読み方の話です。

入居一時金は「家賃の前払い」です

入居一時金は、法律では「前払金」と呼ばれています。

中身は、これから住む期間の家賃などを、入居時にまとめて払っておくお金です。

そのため、施設はあらかじめ「この期間住む想定で計算しました」という期間を決めています。

これを想定居住期間(償却期間)と呼びます。5年前後に設定しているところが多い印象です。

想定居住期間が終わる前に退去すれば、まだ住んでいない期間の分は戻る。

基本の考え方は、これだけです。

なお、2012年4月からは、権利金など家賃以外の名目でお金を受け取ることは認められていません。

戻らない部分「初期償却」を先に確かめる

多くの施設では、一時金の一部を入居した時点で償却します。これを初期償却と言います。

初期償却された分は、その後いつ退去しても戻りません。

割合は施設ごとに違い、0%のところもあれば、2〜3割ほどのところもあります。

たとえば一時金が600万円で、初期償却が20%、想定居住期間が5年(60か月)だとします。

【初期償却】600万円×20%=120万円(戻らない)

【残り】480万円を60か月で割ると、1か月あたり8万円ずつ償却

【2年で退去した場合】480万円−8万円×24か月=288万円が戻る計算

実際の計算式は契約書に書かれていますので、数字はあくまで一例として見てください。

3か月以内なら、原則として戻ります

冒頭のご家族のように、入居してすぐに退去することもあります。

老人福祉法では、入居から3か月以内に契約が終わった場合の特例が定められています。

短期解約特例と呼ばれるもので、このときは初期償却をしてはいけません。

住んだ日数分の家賃や、原状回復の費用などを差し引いた残りが、返還されるしくみです。

亡くなって契約が終わった場合も、この特例の対象になります。

契約書では「90日以内」と書かれていることもあります。どの日から数えるかも合わせて確認しておくと安心です。

施設が倒産したら、どうなるのか

もう一つ気になるのが、施設の運営会社が立ち行かなくなった場合です。

有料老人ホームには、前払金を受け取るとき、返還に備えた保全措置をとる義務があります。

銀行の保証や保険、信託などを使い、500万円か返還すべき額のどちらか低いほうを守るしくみです。

以前は古い施設に例外がありましたが、2021年4月からはすべての施設が対象になっています。

重要事項説明書に「保全措置の方法」と「保全先」が書かれているので、空欄になっていないか見てみてください。

見学より先に、重要事項説明書をもらう

ここまでの内容は、ほとんどが重要事項説明書に載っています。

私がご家族にお伝えしているのは、見学の前に書類を取り寄せておく、という順番です。

見るところは、次の4つで足りると思います。

【1】前払金の額と、想定居住期間

【2】初期償却の割合

【3】返還金の計算式と、短期解約特例の書き方

【4】保全措置の方法と保全先

書類を見せてもらえるかどうかも、その施設を知る手がかりになります。

一時金を選ぶか、月払いを選ぶか

最近は、一時金なしの月払いプランを用意する施設も増えています。

一時金ありのプランは、そのぶん月々の費用が安く設定されていることが多いです。

長く住むほど一時金ありが有利になり、短いと月払いが有利になる、という関係です。

どちらが得かは、ご本人の体の状態や、何年住むかの見通しで変わります。

決めかねるときは、両方のプランで「3年住んだ場合」「6年住んだ場合」の総額を出してもらう方法があります。

返還金を受け取る人を、先に決めておく

見落とされがちなのが、返還金を誰が受け取るかです。

ご本人が亡くなって契約が終わったとき、返還金は契約で決めた受取人か、相続人に支払われます。

契約書に返還金受取人の欄があることも多く、身元保証人と同じ方を書くのが一般的です。

ただ、頼れる家族がいない、遠方に住んでいて手続きが難しい、というご相談も少なくありません。

そうした場合は、入居の保証や亡くなった後の手続きを引き受ける民間のサービスを検討するご家庭もあります。

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契約の内容や費用はサービスごとに違いますので、複数を比べてから決めるのがよいと思います。

まとめ

入居一時金は家賃の前払いで、想定居住期間が終わる前に退去すれば、残りの分が戻ります。

戻らないのは初期償却の部分です。割合は施設によって0%から数割まで違います。

入居から3か月以内に契約が終わったときは、初期償却をせずに返還するのが原則です。

倒産に備えた保全措置は、2021年4月からすべての施設の義務になっています。

まずは気になる施設の重要事項説明書を取り寄せて、4つの項目を見比べてみませんか。

よくある質問

Q. 想定居住期間を過ぎても住み続けたら、追加でお金がかかりますか。

A. 一般的には、想定居住期間を過ぎても追加の一時金はかからず、そのまま住み続けられます。長く住む方のために、施設がもともと見込んでいる分です。契約書の該当箇所で確認してください。

Q. 返還金はいつ振り込まれますか。

A. 退去後、居室の明け渡しや原状回復の精算が終わってから、とする契約が多いです。期限は契約書に書かれていますので、退去が決まったら早めに確認しておくと安心です。

Q. サービス付き高齢者向け住宅にも一時金はありますか。

A. サ高住は敷金を受け取る形が一般的で、権利金などを受け取ることは認められていません。家賃などの前払いを受け取る場合は、有料老人ホームと同様に返還のルールや保全措置が求められます。

Q. 返還金の額に納得できないときは、どこに相談すればよいですか。

A. まずは施設に計算の根拠を書面で示してもらってください。それでも解決しないときは、お住まいの地域の消費生活センター(消費者ホットライン188)や、施設を所管する都道府県・市の担当課に相談できます。

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※本記事は2026年10月時点の制度をもとに書いています。前払金の保全措置は老人福祉法第29条および同法施行規則、短期解約特例は同法第29条第10項および施行規則第21条、権利金等の受領禁止と保全措置の経過措置の終了は厚生労働省の公表資料によります。計算例は説明のための架空の数字です。実際の返還額は各施設の契約書・重要事項説明書でご確認ください。

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