施設さがし

2026.09.12

東濃で特養を探すとき、隣の市にも申し込めますか|多治見・土岐・瑞浪・恵那・中津川で選択肢を広げる前に知っておくこと

「市内の特別養護老人ホームは、もう全部申し込みました」

東濃にお住まいのご家族から、そんなお話をうかがうことがあります。

多治見にお住まいの方なら市内の特養、土岐の方なら土岐市内の特養。出せるところには全部出した。それでも順番が回ってこない。

そこで多くの方がこう言われます。「もう待つしかないですよね」

でも、そこで一度立ち止まってみてほしいのです。

申し込める範囲は、本当に「お住まいの市の中」だけなのでしょうか。

実はここ、制度の作りを知っているかどうかで、選択肢の数がかなり変わります。私も最初、この線引きをきちんと理解していませんでした。

「市内の特養は、もう全部出しました」のあとに残っている道

東濃は、多治見市・土岐市・瑞浪市・恵那市・中津川市の5つの市が並んでいます。

車で30分も走れば、隣の市に入ります。買い物や通院で、日常的に市をまたいでいる方も多いと思いませんか。

それなのに、施設さがしになると急に「自分の市の中」で考えてしまう。これはとてももったいない考え方です。

結論から言うと、隣の市の特養にも申し込める場合があります。

ただし、申し込める特養と、原則として申し込めない特養があります。

その違いが「広域型」と「地域密着型」です。

特養には「広域型」と「地域密着型」の2種類がある

同じ「特別養護老人ホーム」という名前でも、制度上は2種類に分かれています。

分かれ目は入所定員です。

【広域型の特養】入所定員30人以上/正式には「介護老人福祉施設」/指定するのは都道府県

【地域密着型の特養】入所定員30人未満(29人以下)/正式には「地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護」/指定するのは市町村

厚生労働省の介護サービス情報公表システムでも、地域密着型の特養は「入所定員30人未満の介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」と説明されています。

パンフレットには「特別養護老人ホーム○○」としか書いていないことがほとんどです。定員が何人なのかは、見学のときに聞くか、介護サービス情報公表システムで調べると分かります。

地域密着型(その市町村にお住まいの方のために市が整備した、小さめの施設です)という言葉は、あまり一般には知られていません。

でも、この違いが申し込みの範囲を決めています。

隣の市の広域型なら、住民票を移さなくても申し込めます

広域型の特養、つまり定員30人以上の特養には、市外にお住まいの方も申し込むことができます。

多治見にお住まいのまま、土岐や瑞浪の特養に申込書を出す。中津川にお住まいのまま、恵那の特養に出す。

制度上、これを止めるものはありません。

ここで多くの方が心配されるのが、「住民票を移さないといけないのでは」という点です。そして「住民票を移したら、介護保険はどうなるのか」という不安。

この心配のために、市外の施設を最初から候補に入れない方がいらっしゃいます。実は私も最初はそう思っていました。

でも、ここには住所地特例という仕組みが用意されています。

入所したあと、介護保険はどちらの市のものになるのか

住所地特例(住民票を移しても、保険者=保険を運営する市町村が変わらないようにする仕組みです)について、名古屋市の説明が分かりやすいので引用します。

「被保険者が他市町村の施設に入所等をして施設所在地に住所を変更した場合には、施設所在地の市町村ではなく、施設に入所等をする前の住所地市町村の被保険者となります」

つまり、多治見の方が土岐の特養に入って住民票を土岐に移しても、介護保険の保険者は多治見市のまま、ということです。

これは、施設が多い市に費用の負担が集中してしまうのを防ぐための仕組みです。施設のある市町村が損をしない作りになっているので、市外からの入所を制度が嫌っているわけではありません。

住所地特例の対象になる施設は、次のとおりです。

【対象】介護老人福祉施設(入所定員が30人以上の特別養護老人ホーム)/介護老人保健施設/介護医療院

【対象】有料老人ホーム(サービス付き高齢者向け住宅を含む)/養護老人ホーム/軽費老人ホーム ※地域密着型特定施設を除く

ここでも「30人以上」という線が出てきます。制度は、この定員の線でかなりきれいに分かれています。

地域密着型のほうは、そう簡単にはいきません

一方、定員29人以下の地域密着型の特養は、話が変わります。

地域密着型サービスは、市町村が指定する仕組みです。そして、原則として、その事業所がある市町村の被保険者しか利用できません。

土岐市の公式ページには、はっきりこう書かれています。

「地域密着型サービスは事業所が所在する市町村の被保険者のみが利用できます」

まったく道がないわけではありません。市町村同士が協議して同意すれば、区域を越えて使える場合があります。

ただし、これは事業所側の手続きが必要になります。

土岐市のページでも「本市及び事業所の所在する市町村との協議が必要になりますので、必ず事前にご相談ください」とされ、さらに「本市の指定を受けないままでの利用があった場合は、介護給付費等の支給ができません」と注意書きがあります。

つまり、家族が勝手に決めて申し込める話ではない、ということです。市外の小規模な特養が気になったら、まずお住まいの市の介護保険窓口に聞いてみてください。

なお、この協議や同意の運用は自治体によって違います。東濃5市でも、扱いが同じとは限りません。ここは必ず窓口で確認してください。

申込書はどこに出すのか、という素朴な疑問

もうひとつ、よく聞かれるのが申込書の出し先です。

特養の入所申込書は、施設に直接提出するのが一般的です。一方で、市が様式を統一して配っている自治体もあります。

ここも自治体によって運用が違うところで、東濃の5市でまったく同じとは限りません。

迷ったら、地域包括支援センター(介護の相談をまとめて受けてくれる、市区町村の窓口です)に聞くのがいちばん早いと思います。担当のセンターは、ご本人の住所で決まります。

たとえば中津川市の場合、市の説明では市内に6か所の地域包括支援センターが置かれ、それぞれ担当地区が決まっています。市の面積が広い自治体ほど、センターの数も多くなる傾向があります。

ケアマネジャーがついている方なら、ケアマネジャーに相談してもかまいません。

東濃で、どこまで広げるかを決める考え方

では、実際にどこまで広げればいいのか。

私がご家族にお伝えしているのは、「距離」ではなく「面会に行ける頻度」から逆算するという考え方です。

週に1回は顔を見たいのか。月に2回で足りるのか。それによって、無理なく通える範囲は変わります。

【1】まず、面会に行きたい頻度を決める

【2】その頻度で、負担なく往復できる時間を決める(片道30分なのか、1時間なのか)

【3】その時間で行ける市を地図で確認する

【4】その範囲の広域型の特養を、まとめて申し込む

東濃は中央自動車道とJR中央本線が東西に通っているので、市をまたぐ移動が比較的しやすい地域です。多治見・土岐・瑞浪はひとつながりに近く、恵那・中津川もつながっています。

ただ、冬の路面や、送り迎えをする方の年齢によって、現実的な範囲は変わります。ご家族のどなたが、何年通うのか。そこまで考えて決めていただければと思います。

範囲を広げないほうがいい場合もあります

ここまで「広げましょう」と書いてきましたが、広げないほうがいい場合もあります。

ひとつめは、面会に来られるご家族がお一人で、その方も高齢な場合です。片道1時間の運転が数年続くと、通う側の生活が先に壊れてしまいます。

ふたつめは、かかりつけ医や通院先を変えたくない場合です。施設が遠いと、協力医療機関も変わることが多くなります。

みっつめは、ご本人が地域のつながりを強く持っている場合です。近所の方が顔を出してくれる、昔からの知り合いが同じ施設にいる。そうした環境は、数字に表れませんが本人にとって大きなものです。

急がないほうがいい、という判断も立派な判断だと思います。在宅のサービスを足して半年粘る、という選択肢も一緒に考えてみてください。

制度がこうなっている理由

そもそも、なぜ地域密着型だけ市町村の枠がかかっているのでしょうか。

これは2005年(平成17年)の介護保険制度改革で作られた考え方です。「住み慣れた地域での生活を支える」ために、身近な市町村が責任を持って整備するサービスとして設計されました。

だから指定権限も市町村にあり、利用できるのもその市町村の住民が原則。市が、自分の市の高齢者のために、自分の判断で数を決められる仕組みになっています。

裏を返せば、地域密着型が多い市にお住まいの方は、市内の選択肢が意外と厚いということでもあります。市外ばかり見ずに、市内の小規模な特養も改めて確認してみてください。

まとめ

東濃で特養を探すときのポイントを、整理しておきます。

【1】特養は定員30人以上の「広域型」と、30人未満の「地域密着型」に分かれる

【2】広域型なら、隣の市の特養にも申し込める

【3】住所地特例があるので、住民票を移しても介護保険の保険者は元の市のまま

【4】地域密着型は、原則としてその市の被保険者しか使えない(協議と同意があれば例外あり)

【5】広げる範囲は距離ではなく、面会に行ける頻度から逆算する

【6】申込書の出し先や市外利用の運用は、自治体によって違う。必ず窓口で確認する

「市内は全部出した」で止まっている方は、まず地図を広げてみませんか。東濃には5つの市があります。選択肢は、思っているより残っているかもしれません。

次回は、西三河(豊田・岡崎・安城・刈谷・西尾)で施設を探すときの考え方を書きます。

よくある質問

Q. 隣の市の特養に申し込むのに、事前に市役所の許可は要りますか。

A. 定員30人以上の広域型の特養であれば、申し込みそのものに市の許可は要りません。施設の申込書を出せば受け付けてもらえます。一方、定員29人以下の地域密着型の場合は、市町村同士の協議と同意が必要になるため、先にお住まいの市の介護保険窓口へご相談ください。

Q. 住民票を移すと、介護保険料が上がったり下がったりしますか。

A. 住所地特例が適用される施設に入所した場合、保険者は入所前の市町村のままです。したがって、保険料の計算も入所前の市町村の基準で続きます。ただし対象になる施設の種類が決まっているので、入所先が対象かどうかは施設と市に確認してください。

Q. 何か所まで同時に申し込んでいいのですか。

A. 件数の上限は設けられていないのが一般的です。ただし、申込書は施設ごとに書く必要があり、状況が変わったときの更新も施設ごとになります。増やしすぎると管理が大変になるので、実際に通える範囲に絞るほうが現実的だと思います。

Q. 申し込みが早い順に入れるのですか。

A. いいえ。特養の入所は申込順ではなく、必要度の高い方から決まる仕組みです。介護度、家族の介護力、住まいの状況などを点数化して判定する自治体が多くなっています。この点は自治体や施設で運用が違うので、申し込むときに判定の基準を聞いておくと見通しが立ちます。

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※本記事は2026年9月時点の制度にもとづいています。地域密着型サービスの市外利用の取り扱い、特別養護老人ホームの入所申込書の様式や提出先、入所判定の基準は、自治体や施設によって異なります。実際に申し込まれる際は、お住まいの市の介護保険窓口、地域包括支援センター、各施設に必ずご確認ください。

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